世界遺産への道58 ≪七夕伝説と御嶽神社へ続く参道(中津宮境内)≫
2016年04月5日
七夕伝説と御嶽神社へ続く参道(中津宮境内)
大島の南側に位置する中津宮は、大島港渡船ターミナルから徒歩5分のところにあります。
日露戦争の戦勝を記念した鳥居をくぐると、境内左側に天の川が流れています。その川を挟んで、牽牛社(けんぎゅうしゃ)と織女社(しょくじょしゃ)があり、七夕伝説をそのままに配置されています。
筑前続風土記には、「古今集栄雅抄(えいがしょう)」などを引用し、星宮(ほしみや)と紹介されています。
天の川に棚(小さなせき)を設け、その水面に意中の人が映れば恋は成就するとされています。
毎年8月7日に実施されている七夕祭は、鎌倉時代から伝えられています。神社境内の配置は、明治期以降の鳥居や灯籠を除くと、江戸時代に描かれた絵図とほぼ変わりません。
また、社殿北側に広がる社叢林(しゃそうりん)は、県内でも珍しいバクチノキが多く繁殖するなど、原生的な空間をつくり出しています。
中津宮の境内は、海に面している部分だけではありません。社殿裏を抜けると御嶽山の山頂へ向かう参道があり、標高224mの山頂には御嶽神社があります。その周辺から、沖ノ島の露天祭祀(さいし)と同時期の祭祀遺跡が平成22年度の確認調査で発見され、中津宮の始まりを示すことが分かりました。
大島御嶽山遺跡と参道は、国の史跡「宗像神社境内」として年内に追加指定される予定です。山頂からは、沖ノ島(沖津宮)、田島(辺津宮)を見渡すことができます。古代も、この場所から、海域を航行する遣唐使船などの安全を願って、祭祀が実施されていた情景が想像できます。