世界遺産への道最終回 ≪誇りのもてるふるさとへ≫
2017年09月15日
平成14年に始まった世界遺産登録活動は、今年7月「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群の世界遺産登録が決定し、これまでの活動が実りました。むなかたタウンプレスで平成18年1月15日号から連載したこのコーナーは、本号が最終回です。長い間ご愛読いただきありがとうございました。
この最終号では、15年間の登録活動を振り返るとともに、本市は世界遺産のあるまちとしてこれからどのようにあゆむべきかをまとめました。
登録に向けた活動の成果
景観
東郷駅の駅舎や大社口周辺も和の雰囲気を持たせ、道路附属物も景観に配慮したガードレールやカーブミラーに変更するなど少しずつ変わろうとしています。宗像の風土を生かしたまちづくりはこれからも進められていきます。
ボランティア活動
「大島ぐるっ徒ガイド」や「宗像歴史観光ボランティアの会」で活動する人は10年前に10人前後だったのが、今では100人を超えるまでになり、県内で北九州市に次ぐ人数となりました。今後、来訪者の増加で、最前線でおもてなしをするガイドの役割はますます重要となります。
ガイダンス施設と観光
宗像大社の前にあったアクシス玄海は、平成24年4月28日に海の道むなかた館へとリニューアルし、世界遺産のガイダンスの役割も担う施設となりました。ここでは、「神宿る島」として実際に行くことのできない沖ノ島の価値を3D映像で体感することができます。
大島では住民の沖ノ島に対する思いを伝える映像や世界遺産とのつながり、歴史を紹介する大島交流館が平成29年7月15日開館。また、構成資産や観光施設を訪問する人などに向けて、西鉄バスの巡回バス(グランシマール)を運行しています。
登録を支えた人たち
宗像・沖ノ島世界遺産市民の会
市内全コミュニティ、漁協、農協、観光協会、商工会、青年会議所、氏子青年会、宗像市シニアクラブ連合会、宗像歴史観光ボランティアの会、宗像歴史を学ぼう会、から成る組織。
主な活動
遙拝所清掃活動・資産見回り隊・景観先進地視察(太宰府市・八女市・日田市・萩市)・灯籠イベント、市民参加型ミュージカルむなかた三女神記・博多どんたく・筏(いかだ)下り・境内宝探し・年賀状販売など
企業の応援活動
- 世界遺産登録活動での企業の連携活動を紹介
- サンリブくりえいと宗像店、ゆめタウン宗像、福岡トヨタ宗像店=世界遺産展示ブースの設置
- 遠賀信用金庫、JAむなかた=世界遺産定期による寄付
- キリンビールマーケティング株式会社=世界遺産デザイン缶の売り上げの一部を寄付
- トヨタ自動車九州株式会社=塗装技術でのラッピングバス、登録応援マグネットシート製作
他にもたくさんの企業に応援していただいています。ありがとうございます
登録活動15年間のあゆみ
平成14年 世界遺産登録を目標に活動開始
世界遺産の登録活動は、平成14年、エジプト考古学者の吉村作治さんが沖ノ島の価値を見出し、「九州本土初の世界遺産を」という発想から活動を開始。当時、沖津宮(沖ノ島)や大島の中津宮は旧大島村、辺津宮は旧玄海町にありました。そこから、地元有志、観光協会、旧宗像市を含むそれぞれの自治体職員が連携し「世界遺産実行委員会」が発足。
平成15年 大国宝展を開催
宗像大社神宝館で「海の正倉院・沖ノ島大国宝展」を開催。
平成16年 沖ノ島物語実行委員会が発足
同委員会が、ユネスコ世界遺産暫定リスト記載を目標に活動を開始。
平成18年 「沖ノ島と関連遺産群」の提案書を文化庁へ提出
国が暫定リストへの記載について、国の選定から地方自治体による提案制度に切り替えたことを契機に、宗像市・福津市・福岡県は「沖ノ島と関連遺産群」の提案書を9月に作成。同年11月、文化庁へ提出。
平成21年 ユネスコ世界遺産暫定リストに記載、本格的な活動開始
平成19年は記載延期となったが、この年、ユネスコ世界遺産暫定リストに記載。市、福津市、県はそれぞれ世界遺産登録推進室を設置し本格的に世界遺産登録活動を開始。
平成22年 宗像・沖ノ島世界遺産市民の会が発足
9月26日発足。同会は、世界遺産登録活動の要となる。(上記参照)
平成27年 7月28日 文化審議会が本遺産を推薦遺産に決定
平成21年から同27年までの7年間で、専門家会議、国際専門家会議を重ねて議論。資産の価値や保存管理の方法、手段も記した推薦書(素案)が完成。文化審議会が国内の暫定リストに記載されている遺産の中から、本遺産を推薦遺産に決定。
平成28年 ユネスコへ推薦書提出、現地視察
1月27日、日本政府はユネスコに推薦書を提出。これを受けて9月7日から11日にかけ、ユネスコの諮問機関であるイコモスが現地を調査。イコモスはこの現地調査報告を加味し、推薦書を審議。
平成29年 沖ノ島と3岩礁のみを記載とするイコモス勧告
5月5日、イコモスは沖ノ島と3つの岩礁が世界遺産一覧表記載に妥当という内容の勧告を公表。関係者一同は、沖津宮遙拝所、中津宮、辺津宮、新原・奴山古墳群が除外されたことに直後は落胆しましたが、8資産として価値を成すことを関係国へ説明。
平成29年 7月9日 全資産の世界遺産登録が決定
7月2日から同12日、ポーランドのクラクフで開催された第41回ユネスコ世界遺産委員会で、文化庁長官をはじめとする現地での政府代表団による説明が実を結び、日本時間の17時47分、全資産の世界遺産登録が決定。
世界遺産のあるまち これからの取り組み
世界遺産登録活動は、登録されること自体が目的ではなく、誇りある市の歴史文化や自然風土が未来へと受け継がれていくことが目的です。世界遺産のあるまちとなった宗像市の将来について考えます。
資産の保存と活用
世界遺産の構成資産である8つの資産のうち、市内の7つの構成資産は、史跡「宗像神社境内」であり、そのほとんどが宗像大社の所有です。これらの資産は保存管理計画を策定し、現状変更の基準を設けて資産の価値を損なわないような仕組みを作っています。また、境内の将来像についても整備計画の策定を進めているところです。今後は、資産の保存状態の変化を継続して調査し、ユネスコに報告します。
周辺地域の生活を守り伝える
本遺産の緩衝地帯とは、資産を保護するために必要な周辺範囲に設置するもので、資産周辺の風土、景観を損ねないように保護保全するためのものです。
緩衝地帯は、大島、地島を含め、景観法に基づく景観重点区域として守られています。漁業や農業が今後も衰退せず営まれることも、緩衝地帯を保護していくうえで重要な課題です。農村集落や漁村集落と信仰との関わり、つまり、五穀豊穣や豊漁を願う信仰こそが顕著な普遍的価値へと貢献し、歴史・文化・自然が織りなす宗像らしい風土づくりにつながります。
自然環境を守る
世界遺産は、地域が遺産の保護管理へ積極的に関わることが重要です。みじかな活動の一つとしては、自分たちが住む地域のゴミを拾う、雑草を刈るなどといった行動が風土、景観、環境を守る第一歩となります。市は、今後も資産と緩衝地帯の保存活動を実施していきます。みなさんにも積極的に関わっていただける機会や仕組みを考えていきます。
次世代に伝える
価値ある遺産を継承し守っていくためには、次世代を担う子どもたちの参画が必要です。そこで市内の小・中学校では、ふるさと学習の一環として世界遺産学習の時間が平成30年度から取り入れられます。
教科書の中で宗像地域に関わる出来事と関連づけて、改めてふるさとについて知ることも重要です。世界的な価値を持つ宗像の歴史に特化した授業を通して、子どもたちひとりひとりの心に郷土に対する理解と誇り、愛着が育くまれることを期待しています。
宗像・沖ノ島世界遺産市民の会が開催
宗像・沖ノ島世界遺産市民の会では、宗像大社の秋季大祭にあわせて下記のイベントを開催します。ぜひご参加ください。
問い合わせ先
同会事務局(世界遺産登録推進室内)
電話番号:0940-36-9456
神迎え・灯籠の道
三女神が通る道に灯籠をともします。
日程
9月30日(土曜日)から10月3日(火曜日)まで
点灯時間
午後7時から午後9時まで
開催場所
海の道むなかた館から玄海コミセンまでの約1kmの区間
宗像大社・辺津宮境内無料ガイド
世界遺産の構成資産の一つである宗像大社辺津宮の境内を、宗像歴史観光ボランティアの会のガイドが案内します。
日程
9月23日(土曜日・祝日)、同24日(日曜日)、同30日(土曜日)
受付時間
午前10時から午後3時まで
受付場所
宗像大社・祈願殿よこのテント
定員
15人以内のグループ