世界遺産への道62 ≪推薦書の提出に向けて世界的価値ある遺産を守る≫

市が目指している世界遺産は、不動産を対象としたものです。最近話題となった、「和食」の無形遺産や山本作兵衛の絵の記憶遺産、大分県や熊本県の世界農業遺産とは少し異なります。現在日本には、13の文化遺産と4の自然遺産の計17の世界遺産があり、法隆寺や姫路城、原爆ドームや屋久島などが有名です。昨年、富士山が世界遺産に登録されたことは、記憶に新しいでしょう。

世界遺産に登録されるためには、必ず、暫定リストに記載されなければなりません。世界遺産の予備軍ともいえる暫定リストに記載されているものは、現在、日本に12件あります。そのうち「富岡製糸場と絹関連遺産群」は、今年、世界遺産の登録の可否が決定。「明治日本の近代革命遺産」は、今月推薦書をユネスコ世界遺産センターへ提出し、平成27年6月ごろに世界遺産の登録の可否が決定します。

推薦書は、国内から年に1件しか提出することができません。「宗像・沖ノ島と関連遺産群」は、平成27年2月の提出を目指していますが、本年度、推薦書の提出が有力視されていた「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の他、新たに「北海道・北東北の縄文遺跡群」や「金を中心とする佐渡(さど)鉱山の遺産群」、「百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群」なども提出を目指しています。

このような状況の中で、文化庁や日本政府が、どの遺産をユネスコ世界遺産センターへ提出するかによって、平成28年の世界遺産登録に近づくのがどこになるかが決まります。

推薦書は、世界遺産登録の審査を実施する上で、とても重要な基礎資料です。現在、福岡県、福津市と、合同で作成中です。推薦書の項目は、所在地に始まり、資産の概要、資産の価値、評価基準の適用、真実性と完全性、他の資産との比較、資産と資産周辺の保護方法、観光客への対応、経過観察の体制などが記されます。

世界遺産登録は、推薦書がいくら完璧にできたとしても、「資産そのものが世界遺産としての価値を保ったまま未来永劫守ることができるのか」さらに、「資産がある宗像の歴史文化風土をどのようにして保護し、環境や景観をどのようにして保全していくか」ということが、現実的なものとして動き出さなければなりません。世界的に価値のある遺産を、周辺地域や訪れる人たちが、遺産を大切にし、保護管理に積極的に関わっていることで、資産の価値を高め、世界遺産登録実現に近づくことができるのです。

画像:「石見銀山遺跡とその文化的景観」の推薦書
「石見銀山遺跡とその文化的景観」の推薦書